突発非同期不連続

http://fmht7.hateblo.jp/archive

#公共図書館に関する12の質問

これまでに書かれたエントリー。
http://www.nantoka.com/~kei/diary/?20131221S1
http://ameblo.jp/senryo-sojo/entry-11733823034.html

私も書いてみます。

前提

まず、公共図書館に対する私の基本的なスタンスですが

  • 図書館とひとくくりに考えず、国立国会図書館、都道府県立図書館(広域図書館)、市区町村立図書館(地域図書館)、それぞれの役割、位置づけを明確にして、それにあわせた利用を行う。それらをシームレスに利用するためのネットワークが公共図書館の特徴であり利点だとも思っています。
  • 図書館に閉じた系での最適さや、図書館中心、図書館だけで物事を考えるような「図書館原理主義」には与しません。
  • 図書館は出版物としての本が情報源としての存在感や必要性において縮退するのに併せ、このままでは衰退の一途を辿るのみと思っており、考え方を変えないと特に身近な地域の図書館は維持できないターニングポイントにあると思います。
  • 「開いている時間に行ける」「静かで不便でも適応できる」層から、潜在的なニーズに適応させることにより利用者層を拡大する必要性を感じています。(ハード/施設に加え、ソフト/サービスのバリアフリー化)
  • 一人でも多くの人が生活に図書館を取り入れ、気軽の書物に触れる機会が増え、習慣となれば、社会がより良くなると信じています。
  • 図書館は「共存共生」「所有より共有」「地域の課題や問題が集約」する拠点になっていくと思います。また図書館で発生する問題、地域の課題に運営者と利用者が一緒になって解決にあたるべきと思っています。
  • 地域の課題解決において「図書館が課題解決行う/図書館で課題解決が完結する」のではなくて、館内の情報リソースに限らず、地域の人的リソース、行政/民間サービスなど、課題解決に必要なリソースと当事者を結びつけるのが役割だと思う。駆け込み寺的なイメージ?
  • 図書館は「みんなで作る地域の本棚」という感覚もあります。
  • 普通に知的活動を行う上で、また普通に書物に接するために、現状の図書館から「音」「開館日・利用時間」「飲食」「本の並べ方」などの制約を段階的に部分的に取り払っていく必要があると思っています。「できない」図書館から「できる」図書館へ。
  • 図書館を3つの言葉で表すと「オープン」「フリー」「ネットワーク」。つまり分け隔てなく、(できる限り)無料で、シームレスに利用できる身近な公共施設が公共図書館だと思います。

【公共図書館に関する12の質問】

質問1.どのように図書館を利用していますか?
<答え>図書館はネットにない情報、得られない着想を得るための空間と思っています。5感で情報を感じ、発見がある三次元空間に身を置くことで刺激を受けています。また、ネットではいとも簡単に情報が消える(消される)ことがありますが、図書館はその保存性の高さもかっています。
質問2.図書館カフェをどう思いますか?
<答え>図書館に気軽に立ち寄れ、多くの人が利用できる空間にする一環として賛成です。図書館は他の公共空間と較べても他人に迷惑をかけることなく、自然に知的活動を行う最低限のルールとすることが求められると思います。
質問3.図書館と本屋さんとの違いは何ですか?
<答え>本屋は売れる本、売りたい本が並べられているところであり、最新の本、売れ線の本が中心の場所。図書館は古い本も含めバランス良く司書がプロの目で選んだ本が置かれているところ。図書館は利用者による選択の自由度が大きく、書店は見方によってはフィルタリング、市場という緩やかなバイアス/検閲がかかった環境であるとも言えると思います。利用者に能動を求める図書館、受動も受容する書店(対価も求められる)とも言えると思います。さらに、余談かもしれませんが、質問1にも書いた通りネットは提供者都合で簡単に削除することが可能であり、残っている情報は書店よりもさらに提供者都合、偏りがあると言えるかもしれません(提供者が十分多いので総体としては多様性が保たれているようにも思いますが、特定のテーマや供給場所においては注意が必要だと考えます)。また中立性に加え、能動性においても同様に「図書館>書店>ネット」の関係が成り立っているようにも感じます。
質問4.公共図書館の受益者は誰でしょう?
<答え>社会全体だと思います。受益者というより利害関係者と言い換えた方が良いかもしれません。供給者としての、著作権者、出版者、流通業者、受け手としての読者、社会における保存機能など。また図書館で得られた知見を社会に還元されることも考慮する必要があるでしょう。また特に地域の図書館はその時代、その場所で生活した人達の「知の貝塚」のような形で後世に知的活動の証を残す意義も大きいと思います。
質問5.利用者はお客さんでしょうか?
<答え>公共施設における運営者と利用者は対等であるべきと思います。一方で従来の図書館に運営者側が管理者として高圧的だったり不躾だった反省からホスピタリティを向上させる意味もあるのではないかと思います。一方で個人情報保護の高まりから名前で呼ぶことが憚られるようになったことから呼称として「お客さん」と言っている要因が大きいのではないでしょうか。何か良い呼び方ありますか?無ければ「お客さん」で構わないと私は思います。
質問6.開館時間は長いほど、開館日数は多いほど良いのでしょうか?
<答え>利用者にとっての利用環境やサービスにおいて「バリアフリー」であるべきと思います。そういう意味でコスト対効果も考えながら十分工夫をする必要があると思います。毎週月曜休み、9時~17時などという運用は見直すべきでしょう。だからといって商店のように24時間365日に近づけることだけが解答だとも思いません。特定の人だけでなく老若男女が幅広く利用できるようにするためには、できるだけ多様な生活パターンにも対応すべき運用を工夫して欲しいと思います。
質問7.図書館にベストセラーは必要でしょうか?複本を買うのはどうでしょう?
<答え>ベストセラーでもマイナーな本でも区別なく置かれなくてはいけません。ただお金と場所に限界があるのでより効率的なコレクションが必要でしょう。私は図書館は知のセーフティーネットであると同時に、本のショールームであるべきと思います。また目の前の常連さんだけでなく、社会に対して奉仕し利用を広げることを優先すべきと思います。ベストセラーについても工夫次第で禁帯出1冊、貸出1館に1冊など複本を最低限に抑え、コレクションの多様性を阻害することないよう配慮すべきと思います。
質問8.学習室は必要でしょうか?
<答え>図書館を知的活動の場として必要とする地域の人に提供する責務があると思います。学習室が求められれば、他の利用者と共存できるように、また不公平感が無いような運用(時間制限制など)に知恵を絞って欲しいと思います。
質問9.公共図書館はなぜ無料で利用できないといけないの?
<答え>自活し生きていくための最低限の情報や知を得る場所としてセーフティーネットになるべきであり、その範疇では無料で利用できるべきと思います。ただ、何でも無料ということではなく、早さや深さを求めるためには有料サービスがあっても良いと思います。(その境目、歯止めが困難であると思いますが…)
質問10.図書館の自由って何?
<答え>社会(体制)にとって正しいこと(都合の良いこと)だけではなく、幅広い意見、知見が集積される場所。また商業、市場の圧力もないニュートラルな空間である貴重な場所でもあると思います。それらの知に誰からも干渉や指図受けることなく自発的に選択し吸収できる場所。それを担保するためのステートメントが「図書館の自由」*1だと理解しています。
質問11.図書館にリコメンドサービスはあったほうが良いと思いますか?
<答え>出会いの機会として、テーマに対して一定のセレクションがされることは良いと思います。単純に今までに読んだ作者やテーマについて機械的に本を羅列するレベルなら、図書館で提供されなくて他でいくらでも得ることができ、不要です。本のプロらしい利用者にとって選択の余地がある、でも単に本を並べるだけでない発見や出会いの機会を設けるなど図書館らしさを打ち出すと良いのでは。
質問12.電子書籍が普及すると公共図書館はどうなっていきますか?
<答え>紙も電子をシームレスに提供できる環境が求められると思いますので、それに応えてくれることを期待しています。また、知のバリアフリーやセーフティーネット(著作権フリーな書籍を来館困難者に提供するなど)や、人気本(期間限定の利用権活用)への対応において、公共図書館における電子書籍活用の可能性が十分があるようにも思っています。

図書館本

昨年は図書館に関する本をいろいろ読みました。
例:

特に、これらの本に感銘を受けました。

だから図書館めぐりはやめられない―元塩尻市立図書館長のアンソロジー

だから図書館めぐりはやめられない―元塩尻市立図書館長のアンソロジー

図書館はラビリンス―だから図書館めぐりはやめられない…〈Part2〉

図書館はラビリンス―だから図書館めぐりはやめられない…〈Part2〉