突発非同期不連続

http://fmht7.hateblo.jp/archive

書籍の貸与権の経緯に関して

いくつか文献を参照する機会あり、自分用にメモしておきます。

  • 1984(昭和59)年に著作権法が改正され、貸与権(第二十六条の二:当時)が新設された。
    • その際、書籍または雑誌の貸与には当分のあいだ適用しないとされた。(附則第四条の二)
    • 一方、図書館については、非営利、無料、すでに公表されていることを条件に、著作物(映画の著作物を除く)を公衆に貸与することができるものとした(38条4項)。
  • 1999(平成11)年に譲与権が二十六条の二として制定されて、貸与権は二十六条の三にうつった。*1
  • 2004(平成16)年*2に附則第四条の二が廃止が改正され、2005(平成17)年1月1日施行により、書籍又は雑誌にも貸与権が認められることになった。
  • 街の貸本屋について以下理由から、出版物貸与権管理センターと全国貸本組合連合会との合意により、2000(平成12)年以前に開業した小規模な貸本屋貸与権料の支払いを免除された。
    • 江戸時代から自由におこなわれてきたという長い歴史があること
    • 大きな経済的利益をあげている実態もなく、新刊本の売れゆきに影響をあたえているとは思われないこと
  • 貸与について
    • 一般的には占有主体の変更を伴う行為を指すと考えられている。店舗で利用させる行為は、利用中も店舗経営者が占有し続けているといえるので、占有主体の変更がないことになり、「貸与」に当たらない。
    • つまり、漫画喫茶のコミックも、理髪店、ラーメン屋、一般の喫茶店と同様「展示」であってレンタルではないとされて貸与権の適用外となった。

その他:

  • 附則の変遷

(書籍等の貸与についての経過措置)
第四条の二 新法第二十六条の二の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものは除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。

http://pddlib.v.wol.ne.jp/rules/copyright/fusoku.txt

→1999(平成11)年に「新法第二十六条の三の規定は~」に変更され、同附則廃止時もこの状態であった。
http://ha.shiftweb.net/copyright/lawspl.html

  • 無許諾で貸与できた書籍・雑誌の条件

改正法の公布日の属する月の翌々月の初日において公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌の貸与については、引き続き無許諾で貸与できることとする。(附則第4条)

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/04112401/001.htm

→2005/2/1か3/1のこと?

  • 「図書館に通う―― 当世「公立無料貸本屋」事情 」より

図書館が大きな変貌をした場合に、営利を目的としないということで、絶えず著作権法の制限のもとでいられるのかどうか、疑問である。

  • 著作権法第38条4項における「非営利・無料」についての説明(文化庁「著作権テキスト」より)

※ 本条にいう「営利」とは,反復継続して,その著作物の利用行為自体から直接的に利益を得る場合又はその行為が間接的に利益に具体的に寄与していると認められる場合をいいます。
また,本条にいう「料金」とは,どのような名義のものであるかを問わず,著作物の提供又は提示の対価としての性格を有するものをいいます。逆に言えば,授業料や入館料等を徴収している施設であっても,それらが著作物の提供又は提示の対価として徴収されているものでなければ,本条の「料金」には該当しません。

文化庁の「著作権テキスト」平成21年版が公開されていた。 - Copy & Copyright Diary


参考文献:

*1: https://twitter.com/Zhang_Mao/status/345480099249913856 にて指摘いただきました。

*2:「図書館に通う」の記載「平成十八年」は誤りと思われる